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LOCAL NEWS · 世界のローカルニュース · 2026-08-30

偽の出社で社会へ戻る韓国の若者たち、エスカレーター論争も再燃

韓国で社会から孤立する若者の支援が本格化しており、ソウル市西大門区では2026年8月、架空の会社に「出社」して日常を取り戻すユニークなプログラムが始まりました。一方で通勤の足元では、エスカレーターの片側を空けるか否かのマナー論争が世論を二分し、安全と効率の狭間で揺れています。超少子化が叫ばれるなか、隣国の若者が抱く意外な結婚願望の強さや、中年男性の美意識の変化、さらには外国人観光客に人気の「K-トレッキング」など、多角的な視点から等身大の韓国社会の今を伝えます。

ローカルニュース東アジア5本のローカル記事から

リード

ソウル市西大門区にある静かなコミュニティーセンター。8月30日、ここには「出社」という日常をあえて演じることで、社会との接点を結び直そうとする若者たちの姿がありました。彼らが所属するのは、実在の企業ではなく、行政が用意した「NEET(ニート)カンパニー」という名の仮想の職場です。かつては当たり前だった「朝起きて、服を着替え、目的地へ向かう」という動作。長期間,自室のドアを閉め切って過ごしてきた人々にとって、その一歩は外の世界への勇気ある挑戦です。今、韓国ではこうした孤立した若者の自立を促す試みが、生活の現場から広がりを見せています [1]

「ノルマなし」の偽オフィスでリハビリに励む若者たち

ソウル市西大門区が、特定非営利活動法人「NEETピープル」と協力して実施しているこのプログラムには、19歳から39歳までの若者33人が「新入社員」として参加しています [1]。8月30日現在、彼らは10月19日までの2カ月間、週5日はオンラインでログインし、週に1度は区の施設に実際に集まるというルーティンをこなしています [1]。この「会社」の最大の特徴は、企業としての体裁を保ちながらも、営業目標や業績評価といったプレッシャーが一切ないことです。午前11時から午後4時までの勤務時間中、参加者は過度な負担を感じることなく、人間関係の構築や生活リズムの回復に専念できます [1]。背景には深刻な若者の孤立問題があります。全国調査によると、韓国全土で約54万人の若者が社会的に孤立、あるいは深刻な引きこもり状態にあると推定されています [1]。ソウル市に限っても、若者人口の約5%にあたる13万人が公的な生活から遠ざかっているというデータもあります [1]。西大門区は、このプログラムの前後で参加者にインタビューを行い、その変化を今後の福祉政策に役立てる方針です。「偽のオフィス」は、一度社会のレールから外れた若者たちが、再び外の世界へ足を踏み出すための「緩衝地帯」として機能しています [1]

「片側空け」か「2列で停止」か、揺れるエスカレーター事情

若者が社会復帰を目指す一方で、日常の通勤風景では、長年続く「エスカレーターの乗り方」を巡る論争が再燃しています。韓国政府が主要7都市の成人1,000人を対象に行った調査結果が8月30日に公表され、世論がほぼ真っ二つに割れていることが明らかになりました [2]。調査によると、急ぐ人のために片側を空ける「1列立ち」を支持する人が50.1%だったのに対し、2列に並んで立ち止まるべきだと答えた人は49.9%と、わずか0.2ポイントの差でした [2]。8月29日にソウルで開かれた公開フォーラムでは、市民や専門家約200人が集まり、安全性と効率性のどちらを優先すべきか熱い議論を交わしました [2]。韓国産業関係研究院のチャン・ギェリョン研究員は「単にどちらが正解かではなく、誰にとっての効率か、いつ、どこでの話かを考える必要がある」と指摘します [2]。実際にソウル近郊の九里(クリ)駅で行われた実験では、2列で立ち止まった方が、片側を空けるよりも一度に運べる人数が約16%増加するという結果も出ています [2]。また、安全面では、エスカレーターを歩き降りる際の衝撃は体重の約2.01倍に達し、片側に重さが偏ることで機械への負荷も高まると警告されています [2]。効率を重んじる韓国の「パリパリ(早く早く)」文化と、安全意識の向上が、エスカレーターの上でぶつかり合っています。

結婚に前向きな韓国の若者、おじさんも「若見え」に投資

少子化が社会問題化するなか、若者の意識調査では意外な一面も見えてきました。8月30日に発表された日韓共同の調査(20歳〜39歳の男女各2,000人を対象に6〜7月実施)によると、「結婚に関心がある」と答えた韓国の独身者は81.4%に達しました [3]。日本の57.6%と比較すると、韓国の若者の結婚意欲の高さが際立ちます [3]。「一生結婚するつもりはない」と答えた割合も、日本が42.4%だったのに対し、韓国は18.6%にとどまりました [3]。一方で、結婚の条件として日韓ともに最も多く挙げられたのが「夫婦双方の雇用と収入の安定」でした [3]。理想の子供の数として、韓国では52.6%が「2人」と回答していますが、現実の経済的不安がその意欲を阻んでいる構図が浮かび上がります [3]。こうしたなか、自分磨きに余念がないのは若者だけではありません。韓国の中年男性の間では、若々しい外見を維持するための自己投資が一般化しています [4]。かつては美容整形やスキンケアは女性のものという偏見がありましたが、この20年でそのハードルは大きく下がりました [4]。ニューヨークの形成外科医クリシュナ・ヴィアス博士は「年齢が問題なのではなく、鏡に映る自分の姿が、内面の活力や自信を反映していないと感じる時に人は変化を求める」と述べています [4]。韓国の街中では、フィナステリドやミノキシジルといった脱毛治療薬の服用や、日焼け止めの常用、さらにはプチ整形に踏み切る「美意識の高いおじさん」たちの姿が、もはや日常の光景となっています [4]

背景を少し:宮殿よりも「K-トレッキング」にハマる外国人

韓国を訪れる外国人観光客の楽しみ方も、従来のショッピングや古宮巡りから、身近な山を楽しむ「登山」へとシフトしています。8月30日、ソウル北部の北漢山(プカンサン)国立公園では、フランスのハイキング連盟のメンバー11人が、韓国の文化体育観光部長官(大臣)であるチェ・フィヨン氏らと共に山頂を目指しました [5]。韓国観光公社は、2028年までに国立公園への外国人訪問者を300万人にする目標を掲げ、7月からキャンペーンを展開しています [5]。主要な公園では、外国人向けに登山靴やトレッキングポールの無料貸し出しサービスも行われています [5]。昨年の国立公園への外国人訪問者数は約205万人に達し、済州島の漢拏山(ハルラサン)や雪岳山(ソラクサン)が人気を集めています [5]。ソウル市内の峨嵯山(アチャサン)では外国人訪問者が前年比11.8%増となるなど、都市近郊の岩山で心地よい汗を流す「K-トレッキング」が、新たな観光の目玉となっています [5]

日本から見ると

韓国の「NEETカンパニー」の試みは、日本の引きこもり支援にも通じる示唆に富んでいます。日本では「就労支援」というとすぐにスキル習得や面接対策に走りがちですが、まずは「出社という形」だけを整え、心理的ハードルを下げるという発想は、社会との距離を測りかねている若者にとって優しいアプローチに見えます。また、エスカレーターの論争や結婚観の調査からは、日韓の似て非なる国民性が透けて見えます。効率を重視して片側を空ける文化が根強い一方で、安全性のデータが示されると真剣に議論が沸騰する韓国のダイナミズムは、マナーが「暗黙の了解」として固定化されがちな日本とは対照的です。結婚願望が8割を超えながらも、現実の出生率が世界最低水準にあるという韓国の矛盾は、日本よりもさらに深刻な「理想と現実の乖離」を物語っています。おじさんたちの美意識向上も含め、隣国の変化は常に極端で、それゆえに私たちの少し先の未来を映し出す鏡のような面白さがあります。

出典

  1. [1]🇰🇷 韓国Fake office in Seoul helps reclusive youth fight social isolationkoreatimes.co.kr
  2. [2]🇰🇷 韓国One line or two? Koreans can’t agree on escalator etiquettekoreaherald.com
  3. [3]🇰🇷 韓国81% of Koreans want to marry, compared to 58% of Japanese: surveykoreatimes.co.kr
  4. [4]🇰🇷 韓国Middle-aged men show growing interest in maintaining youthful, attractive appearancekoreatimes.co.kr
  5. [5]🇰🇷 韓国Why foreign tourists are trading palaces for peaks in Koreakoreatimes.co.kr