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LOCAL NEWS · 世界のローカルニュース · 2026-08-26

92歳の祖父が譲ったブドウ畑と、アドリア海の「ビーチ囲い込み」騒動

クロアチア東部バラニャ地方で、92歳の祖父から伝統のブドウ畑を継承した35歳の青年が、地方回帰の新たな希望として注目を集めています。一方で、観光シーズンのアドリア海沿岸では、公共のビーチを不法に占拠し私有化しようとする住民と、それに反発する地元民との間で激しい摩擦が起きています。理想を求めてドイツへ渡った移住者たちの苦悩や、首都ザグレブで定着したシェアサイクルの現状など、変化するクロアチアの今を伝えます。

ローカルニュース東欧4本のローカル記事から検証中

リード

夏の終わりの柔らかな日差しが、クロアチア東部バラニャ地方の緩やかな丘陵地を黄金色に染めています。ハンガリー国境に近いズマイェヴァツ村の地下深く、1845年に掘られたひんやりとしたワインセラーでは、代々受け継がれてきた白ワインが静かに熟成の時を待っています。地上に目を向ければ、アドリア海の青い海辺では、公共の砂浜を巡って「ここは俺の場所だ」と言わんばかりの激しい場所取り合戦が繰り広げられ、首都ザグレブの街角では、市民が「Bajs(バイス)」と呼ばれるシェアサイクルに飛び乗り、石畳の道を軽快に駆け抜けていきます。伝統を守る頑固な老人と、新しい風を吹き込む若者。そして「約束の地」と信じた隣国ドイツで葛藤する移住者たち。2026年8月26日、クロアチアの各地からは、生活者の切実な本音と、この国らしい逞しさが透けて見えるニュースが届いています。

歳の祖父がようやく譲った「黄金の畑」を継ぐ青年の決断

クロアチア東部、ドナウ川沿いの肥沃な土地に位置するズマイェヴァツ村。ここで、92歳になるまで頑なにブドウ畑の主導権を握り続けてきた「頑固な祖父」ミハリさんが、ようやく35歳の孫、イヴァン・ゲルシュトマイェル・ゼレンベルさんに家業を譲りました[1]。イヴァンさんはオシエクの大学で農学を学んだ後、迷うことなく故郷の村に戻りました。「他の場所へ行くなんて、考えもしなかった」と語るイヴァンさんは、バラニャ地方でも指折りの古い醸造家一家の4代目です[1]。この一家が守り続けているのは、遅摘みのブドウから作られる甘口の白ワイン。流行の辛口ワインには目もくれず、「他所がもっとうまく作っているものは、あえて作らない」という独自の美学を貫いています[1]。イヴァンさんは、1845年に掘られた土造りのワインセラーを拠点に、EU基金を活用して古い民家を宿泊施設に改装するなど、伝統に現代的な息吹を吹き込んでいます。生産量を増やして質を落とすことを嫌い、あくまで家族経営の規模を守りながら、予約制で地元の郷土料理を振る舞うスタイルを確立しました[1]。「愛がなければ、良いブドウも美味しいワインも生まれない」と語る彼の言葉には、都会でのキャリアよりも、先祖が築いた180年以上の歴史を次世代へ繋ぐことへの誇りが滲んでいます[1]

アドリア海のビーチを「腐ったイチジク」で封鎖する強硬手段

伝統を守る美しい村の話題がある一方で、観光客で賑わうアドリア海沿岸のビビニェでは、耳を疑うような騒動が起きています。公共の財産であるはずの海岸線や桟橋を、まるで自分の庭のように私有化しようとする住民が現れ、地元で大きな問題となっています。8月26日の現地報道によると、人気のビーチ「パドレレ」付近で、何者かが大きなプラスチック製のブイや岩を設置し、歩行者や海水浴客の通行を妨害している様子が確認されました[2]。さらに悪質なのは、通行を阻止するために「腐ったイチジク」を大量に海や岸壁に投げ捨てているという点です[2]。通報した住民は、「腐敗した果実の悪臭が漂い、危険な虫を呼び寄せている。子供たちの健康や安全を直接脅かす行為だ」と憤りを隠せません[2]。クロアチアの法律では、海岸線は「海事遺産」としてすべての市民に開放されるべき公共空間ですが、近年は自分勝手な柵や障害物で「プライベートビーチ」を偽装する行為が後を絶ちません。自治体の監督官による緊急の立ち入り調査と、障害物の撤去が求められています[2]

「約束の地」ドイツは悪夢だったのか、揺れる移住者の本音

クロアチアの若者の多くが一度は夢見るのが、高賃金を求めたドイツやスイスへの移住です。しかし、インターネット上のコミュニティサイト「Reddit」では、理想と現実のギャップに苦しむ移住者たちの生々しい声が飛び交っています。2026年初頭の調査では、ドイツに渡った移住者の5人に1人が、さらなる生活の質の向上を求めて再移住を検討していることが明らかになりました[3]。ドイツで働くあるクロアチア人は、「ここはすべてが崩壊しつつあり、留まる意味がない」と嘆き、より税金が安く直接民主主義が機能しているスイスへの転居を相談しています[3]。しかし、経験者たちの返答は冷ややかです。「スイスの給料は高いが、生活費にすべて消えてしまう。希少なスキルがなければ生活は惨めだ」という指摘や、ドイツ以上に厳しい労働環境、病欠への圧力など、精神的な負担の大きさを強調する声が目立ちます[3]。特に、名字が「〜ić(イッチ)」で終わるクロアチア系の人々は、どれだけ長く住んでも「二等市民」として扱われるという疎外感を抱え続けています[3]。「お金がすべてではないと気づくのは、国を出た後だ」という書き込みは、多くの出稼ぎ労働者の胸に突き刺さっています[3]

首都ザグレブの日常を変えた「Bajs」導入1周年の光景

一方、首都ザグレブでは、1年前に導入された公共シェアサイクル「Bajs(バイス)」が、市民の生活に完全に溶け込んでいます。2026年8月26日のデータによれば、稼働している自転車は約2,000台。前日の8月25日には1日で1万件以上のレンタルが記録されました[4]。ザグレブ市民の「足」となったこのシステムは、1回あたりの平均走行距離が約1.9キロ、利用時間は約21分と、まさにちょっとした移動に最適な手段として定着しています[4]。トミスラヴ・トマシェヴィッチ市長は、登録ユーザー数が7万人を超え、総走行距離が100万キロを突破したことに自信を見せています[4]。課題は、特定のステーションで自転車が枯渇することです。180カ所あるステーションのうち、常に15カ所ほどが空の状態になっており、人気の高さに供給が追いついていません[4]。市当局は、この秋にもさらに1,000台を追加投入し、フリートを1.5倍に拡大する「Bajs 2.0」計画を準備しています[4]。古い街並みが残るザグレブで、自転車が車に代わる主要な移動手段へと進化しようとしています。

日本から見ると

クロアチアのニュースを眺めていると、日本の地方が抱える課題と驚くほど似た構図が見えてきます。92歳の祖父から畑を継いだイヴァンさんの物語は、日本の後継者不足に悩む農家にとって一つの希望のように映ります。一方で、移住先での「二等市民」という言葉は、日本で働く外国人労働者が抱くかもしれない孤独感と重なり、胸が痛みます。最も興味深いのは、ビーチの私有化を巡る「腐ったイチジク」の騒動です。公共の場所を強引に自分のものにしようとするエネルギーは、良くも悪くも強烈です。日本ではマナーや空気を重んじるあまり、ここまで露骨な「囲い込み」は稀ですが、権利を主張する際の激しさは、アドリア海の照りつける太陽のように情熱的です。シェアサイクルの普及も含め、伝統を守りつつも、個人の欲望や利便性をストレートに追求するクロアチアの人々の姿は、どこか人間臭く、変化を恐れない逞しさを感じさせます。

出典

  1. [1]🇭🇷 クロアチアFOTO Djed mu je u 92. godini jedva prepustio vinograd, a Ivan se nakon fakulteta vratio kući: 'Nije mi ni padalo na pamet otići'vecernji.hr
  2. [2]🇭🇷 クロアチアFOTO Bizarne scene iz Bibinja. Zabrinuti mještani ne mogu vjerovati što je čovjek posuo po tlu kako bi zagradio plažujutarnji.hr
  3. [3]🇭🇷 クロアチアHrvatski iseljenici o gorkom životu u 'obećanoj zemlji': 'Mi smo građani drugog reda'vecernji.hr
  4. [4]🇭🇷 クロアチアBajs slavi prvi rođendan! Evo koliko ga Zagrepčani voze i gdje bicikli nestaju najbrževecernji.hr