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LOCAL NEWS · 世界のローカルニュース · 2026-08-08

ヨルダンの夏、合格発表に沸く街角と「毒のある職場」への警鐘

ヨルダンで8月10日、人生を左右する高校卒業試験「タウジーヒ」の結果が発表されます。合格を祝う銃声や花火、交通渋滞が社会問題化するなか、治安当局は厳戒態勢を敷き、市民に節度ある祝福を呼びかけています。一方で、名門大学を卒業し社会へ羽出しゆく若者たちには、現代的な「職場のメンタルヘルス」という新たな壁も待ち構えています。伝統的な祝祭の熱狂と、近代的な労働環境の課題が交錯するアンマンの今を伝えます。

ローカルニュース中東・北アフリカ7本のローカル記事から

リード

乾いた風が吹き抜ける8月のアンマン。夕暮れ時のカフェでは、スマートフォンを握りしめた若者たちが、落ち着かない様子で画面をリロードし続けている。ヨルダンの夏を象徴する光景だ。2026年8月10日、この国の高校生にとって最大の関門である高校卒業試験「タウジーヒ」の結果が、午後4時に専用サイトで一斉に公開される[1][5]。この試験の結果は、どの大学のどの学部に進めるかを冷酷なまでに決定づける。合格が決まれば、親戚一同が集まり、羊を屠り、街中がクラクションの嵐に包まれる。しかし、その熱狂の裏側では、治安当局による厳しい警告と、社会へ出た後の「燃え尽き」を懸念する専門家の声が響いている。

運命の8月10日、銃声と渋滞を警戒する治安当局

ヨルダン教育省は8月8日、2026年度のタウジーヒ(高校卒業試験)の結果を8月10日の午後4時に発表すると決定した[1]。これを受け、ヨルダン治安当局は異例の厳戒態勢に入っている。同省は合格発表の1時間後、午後5時から記者会見を開き、合格率や上位成績者を発表する予定だ[1]。この時期、ヨルダン全土は「お祭り騒ぎ」を通り越した混乱に見舞われる。合格を祝うために空に向けて銃を撃つ「祝砲」や、深夜まで続く花火、そして車を連ねて道路を占拠するパレードが恒例となっているからだ。公共安全省は8月8日、大学の卒業式シーズンとタウジーヒの結果発表が重なることを受け、道路の封鎖や発砲、危険な花火の使用を厳禁する警告を出した[5]。当局は「市民の安全が最優先であり、文明的な方法で喜びを表現してほしい」と呼びかけている[5]。合格は家族の誇りだが、一歩間違えれば悲劇に変わる。祝祭の熱狂と公共の秩序をどう両立させるか、この国の夏の風物詩ともいえる議論が今年も再燃している。

「ハシムの団」808人の門出と、ある青年の不屈の物語

タウジーヒの緊張が漂う一方で、大学のキャンパスは晴れやかな空気に包まれている。国内屈指の名門、ヨルダン大学では「第61期・ハシムの団(Fauj al-Hashim)」と名付けられた卒業式が挙行されている[2][7]。特に注目を集めているのが工学部だ。今年度は808人のエンジニアが誕生した[2]。同学部は、世界的な産業構造の変化に対応するため、半導体工学や人工知能(AI)、ロボット工学といった先端分野の専攻を新設し、卒業生を即戦力として送り出している[2]。この祝祭ムードのなか、国民の大きな感動を呼んでいる一人の卒業生がいる。2020年に凄惨な事件に巻き込まれ、両手と視力を失う重傷を負って「ザルカの少年」として知られたサレハさんだ[4]。彼は8月8日、ヨルダン大学法学部を「優(Very Good)」の成績で卒業した[4]。凄惨な過去を乗り越え、法学士という夢を掴み取った彼の姿は、SNSを通じて「不屈の精神の象徴」として称賛されている。彼のような若者たちが、伝統的な法曹界や最先端の技術分野へと羽ばたいていく[2][4]

「毒のある職場」が招く燃え尽き、専門家が鳴らす警鐘

輝かしい門出の先に待つ現実は、必ずしもバラ色ではない。ヨルダンの社会学者、シュルーク・アブ・ハムール博士は、地元メディアの取材に対し、現代のヨルダン社会に蔓延する「毒のある職場環境(Toxic Work Environment)」への強い懸念を表明した[3]。ハムール博士は、上司を「職場の心理的気候のエンジニア」と定義する[3]。博士によれば、恐怖政治やいじめ、不公平がまかり通る「毒のある環境」では、従業員のエネルギーは自己防衛に浪費され、やがて「燃え尽き症候群」を招くという[3]。特に深刻なのが、仕事のストレスが家庭にまで波及する「エモーショナル・スピルオーバー(感情の流出)」だ。職場での緊張が、家庭での過度なイライラや、慢性的な頭痛、過敏性腸症候群といった身体症状として現れる[3]。さらに博士は、現代特有の「デジタル奴隷制」についても言及した[3]。24時間連絡が取れる状態を強いられることが、心理的な境界線を破壊しているという。「心理的安全性が確保されて初めて、若者の情熱は持続可能なエネルギーに変わる」と博士は説く[3]。せっかく難関試験を突破して社会に出た若者たちが、旧態依然とした組織文化によって潰されていく現状に、社会の視線が注がれ始めている。

背景を少し

ヨルダンにおいて、タウジーヒの結果は単なる成績発表ではない。これは、若者の将来の職業的地位を決定する「国家的な選別」の儀式である。2026年度の結果も、例年通り8月の上半期に発表されることが見込まれていた[6]。この試験で高得点を取らなければ、医学部や工学部といった人気の学部への入学は事実上不可能となる。そのため、家族は家庭教師を雇うなど多額の投資を行い、結果発表の日にはその投資が報われたかどうかを、銃声や花火という形で近隣に誇示する文化が根付いている。一方で、ヨルダン大学の卒業生に冠された「ハシムの団」という名称は、ヨルダン王室(ハシム家)への忠誠と、国家の未来を担うエリートとしての自覚を促す伝統的な呼称である[7]

日本から見ると

合格発表を祝って銃を撃ち、街中を車でパレードするというヨルダンの光景は、日本の静かな合格発表とは対極にある。しかし、その根底にある「試験の結果が人生を決定づける」という強烈なプレッシャーと、それから解放された瞬間の爆発的な喜びは、受験戦争を経験する日本人にも理解できるものだろう。興味深いのは、ヨルダンでも「職場の心理的安全」や「デジタル奴隷制」といった言葉が、社会学者の口から語られている点だ。伝統的な家族の結束や祝祭の文化が色濃く残る一方で、若者たちが直面する悩みは、日本のビジネスパーソンが抱える「燃え尽き」や「ワークライフバランス」の課題と驚くほど似通っている。サレハさんのような逆境を跳ね返した個人の成功物語を称賛する一方で、組織としての「毒」を浄化しようとする動き。ヨルダンのローカルニュースは、伝統と現代の狭間で揺れる、この国の等身大の葛藤を映し出している。

出典

  1. [1]🇯🇴 ヨルダンالتربية تحدد موعد إعلان نتائج امتحان الثانوية العامة التوجيهي لعام 2026.. رابطroyanews.tv
  2. [2]🇯🇴 ヨルダンفوج الهواشم.. كلية الهندسة في الجامعة الأردنية تودع 808 مهندسين ومهندساتroyanews.tv
  3. [3]🇯🇴 ヨルダンخبيرة اجتماعية لـ رؤيا: بيئات العمل السامة تدمر الصحة النفسية وتؤدي للإحتراق الوظيفيroyanews.tv
  4. [4]🇯🇴 ヨルダンفتى الزرقاء صالح يتخرج من الجامعة الأردنية بتخصص القانون بتقدير جيد جدًاroyanews.tv
  5. [5]🇯🇴 ヨルダンالأمن العام يحذر من إطلاق الألعاب النارية وإغلاق الطرق مع قرب نتائج التوجيهيroyanews.tv
  6. [6]🌐 Web検索صدى الشعبshaabjo.com
  7. [7]🌐 Web検索الجامعة الأردنيّة تبدأ بروفات تخريج الفوج الحادي والستين "فوج الهواشم"talabanews.net