リード
7月第2週のカナダは、空を見上げる人とスマートフォンをスクロールする人、過去の権利を探す人が交錯する。8月12日に迫る皆既日食が部分観測にとどまると知りつつも、天文愛好家は観測グラスを手に空模様を気にし始める[1]。リビングではNetflixが8月3日から配信する短尺動画の予告編が流れ、職場の休憩時間には「未請求の銀行口座がないか」と話す声が聞こえる[2][4]。さらに、2010年冬季五輪以来、先住民文化を競技大会に織り込むバンクーバーの精神が、2026年のFIFAワールドカップへと引き継がれようとしている[3]。日常に溶け込む科学・デジタル・伝統――その一週間を拾う。
「皆既」は逃すが部分日食観測に熱視線――天文ファンの8月12日
8月12日、ロシア北部からスペインにかけて皆既日食が起こる。皆既帯はカナダを外れるため、国内では部分日食のみ観測できる[1]。スペイン北部では昼間が一時的に夜のように暗くなり、気温が下がり、動物が寝静まる不思議な薄明が広がるという[1]。2006年以来欧州本土で初の皆既日食をカナダから直接体験できない天文ファンからは落胆の声も聞かれるが、部分食の写真をソーシャルメディアで共有する計画が天文コミュニティで進んでいる。
Netflix、8月3日から短尺動画配信――「TikTokの領域」へ本格参入
動画配信の巨人Netflixが、8月3日からカナダや米国、英国などで短尺動画の配信を開始する。ライセンス契約を結んだのはペンスキー・メディアやバズフィード・スタジオ、コンデナストなど大手メディアで、『ヴァニティ・フェア』の「嘘発見器」シリーズやバズフィードの「30の質問」といった人気シリーズが2分から20分以上のエピソードで提供される[2]。Netflixのアニメシリーズ・キッズ&ファミリー担当副社長ジョン・ダーデリアンは「会員は作品を観て終わりではなく、最後のクレジットが流れた後も、好きな物語や人物を探求し続けたいのです」と述べ、TikTokやYouTubeに対抗する狙いを隠さない[2]。調査会社デジタルiによると、2025年にYouTubeの平均視聴時間がNetflixを上回り、TikTokも肉薄しているという[2]。カナダの利用者にとっては、通勤電車の中でスマートフォンを縦に持ち、短尺動画をスクロールする新たな習慣が加わりそうだ。ただし、すでにYouTubeやTikTokに親しんだ視聴者が、あえてNetflixの短尺に乗り換えるかには懐疑的な声もある。
2010年五輪からW杯へ――先住民文化を世界に開くバンクーバーの系譜
カナダのトロント・スター紙(7月8日付)は、2010年冬季バンクーバー五輪から2026年FIFAワールドカップに至るまで、国際競技大会における先住民文化の包摂をバンクーバーが先駆けてきたと振り返る記事を掲載した[3]。五輪では開会式での伝統的な歓迎やマスコット、W杯では会場でのアート展示や土地承認が計画されるなど、その系譜は続いている。国際的なスポーツイベントが、ホスト地域の先住民族の尊厳と文化をいかに可視化するか――五輪で蒔かれた種が、サッカーという世界最大の祭典で花開こうとしている。
あなたの口座に未請求金が?――カナダで26億ドルが所有者を待つ
カナダには現在、26億カナダドル(約2700億円)以上の未請求の銀行口座や配当金が存在する。カナダ銀行(中央銀行)が16億ドル、ブリティッシュコロンビア州が2億2200万ドル、アルバータ州が1億6800万ドルなど、各州にも管理分がある[4]。制度上、連邦政府の管轄下では、10年間使われなかった口座が「未請求」としてカナダ銀行に移され、残高1000ドル未満は30年、1000ドル以上は100年が経過すると政府の歳入となる[4]。銀行は休眠口座の所有者に対し、2年目、5年目、9年目に通知を送る義務があるが、転居などで連絡がつかなくなるケースが多い。カナダ銀行の広報担当アメリー・フェロン=クレイグは「カナダ国民は未請求財産局(UPO)のウェブサイトにアクセスし、自分の名前で検索できます」と語る[4]。検索や請求手続きは無料で、オンラインで簡単にできるため、宝探し気分でチェックする人が後を絶たない。背景には、移民が多い国で氏名や住所の変更が頻繁に起こり、口座が放置されがちな事情がある。
日本から見ると
日本では未請求の預金は「休眠預金」として知られ、金融機関から預金保険機構に移管された後、民間公益活動に活用される仕組みだが、残高1000万円以下の口座が対象で、請求権は永続する。カナダのように、個人がオンラインで気軽に自分の名前で検索できる中央データベースは存在せず、各金融機関に個別に問い合わせる必要がある。一方、部分日食では、日本でも2026年8月13日に部分日食が観測される地域があり、専用メガネの売れ行きが注目される。Netflixの短尺動画参入は、日本のようにLINE VOOMやYouTubeショートが浸透した市場では、既存プレイヤーとの競争激化を予感させる。何より、先住民文化とスポーツの融合というバンクーバーの姿勢は、アイヌ文化を世界にどう発信するかという日本社会の課題にも通じる。