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LOCAL NEWS · 世界のローカルニュース · 2026-07-19

空港を止める巨大凧と「おバカダンス」の熱狂——ベトナムの素顔

ベトナムの空と地上で、伝統と現代の価値観が交錯しています。ハイフォンでは7月19日、空港近くで巨大な笛付き凧を揚げた親子が摘発され、航空安全を脅かす伝統娯楽のあり方に注目が集まりました。一方、ダナンのビーチでは「完璧を目指さない」新たなダンスが外国人と地元の壁を溶かし、ホーチミンでは深夜のサッカー観戦に数千人が熱狂しています。急速な都市化の中でも、独自の熱量とコミュニティの絆を保ち続けるベトナム社会の今を伝えます。

ローカルニュース東南アジア6本のローカル記事から

リード

南シナ海から湿った風が吹き抜ける夕暮れ時、ベトナムの空には色とりどりの凧が舞います。しかし、その優雅な光景が時に近代インフラを麻痺させる事態を招いています。ハイフォン市のカットビ国際空港周辺では、伝統的な「笛付き凧」の音が響く一方で、航空当局が目を光らせる緊迫した場面が増えています。路上では、深夜まで続く伝統葬儀の騒音や疲弊に疑問の声が上がり始め、ビーチでは見知らぬ者同士が手を取り合って踊る。経済成長の真っ只中にあるこの国では、古くからの習慣と新しいライフスタイルが、時に衝突し、時に混ざり合いながら、独特の活気を生み出しています [1][2][4]

空港を止める「空飛ぶ笛」——巨大凧揚げに460万ドンの罰金

ベトナム北部ハイフォン市のカットビ国際空港近くで7月19日、64歳の父親と34歳の息子が、航空安全を脅かしたとして460万ドン(約2万9000円)の行政罰金を科されました [1]。親子が自宅前で揚げていたのは、長さ3.2メートルにも及ぶ巨大な「ディエウ・サオ(笛付き凧)」です。赤と黒の布で覆われたこの凧には、7本の竹笛からなるセットと、赤と青に点滅するLEDライトが取り付けられていました [1]。この地域では、風を受けて笛が「ボー」という独特の音を奏でる凧揚げが伝統的な娯楽として愛されています。しかし、現場は空港の飛行制限区域内でした。カットビ空港では、こうした浮遊物によるトラブルが相次いでいます。6月6日から7日にかけては、正体不明の飛行物体が侵入したことで、1便が離陸延期、2便が目的地変更を余儀なくされました [1]。また、3月にもアンラオ県で揚げられた2.6メートルの発光凧が、6便の運航スケジュールを混乱させています [1]。ベトナムの人民防空法は、空港の安全回廊内でのドローン運用や凧揚げ、レーザー照射などを厳格に禁じています [1]。伝統の音色を楽しみたいという住民の思いと、国際空港としての安全確保。その板挟みの中で、警察によるパトロールが強化されています。

「悲しむ暇もない」3日超の葬儀に疲弊する遺族の本音

ベトナムの伝統的な葬儀は、親族や近隣住民が集まり、大音量の音楽とともに数日間にわたって営まれるのが一般的です。しかし、この「長すぎる儀式」に変化の兆しが見えています。古都フエ市が「葬儀の時間は死去から72時間以内とする」という新規定を設けたことをきっかけに、世代間で議論が巻き起こっています [2]。特に若年層からは、この制限を支持する声が多く上がっています。ある参列者は「4、5日、時には1週間も続く葬儀で、遺族が悲しみよりも疲労でボロボロになる姿を見てきた」と語ります [2]。衝撃的な別れの後、遺族は不眠不休で弔問客の対応や食事の準備、複雑な儀式に追われます。高齢者が何晩も徹夜し、子孫が交代で棺を守り続ける光景は、美徳とされる一方で、肉体的な限界を超えているという指摘です [2]。背景には、経済的な重圧もあります。テントの設営、飲食費、花代、光熱費などは日数に比例して膨らみます。労働者世帯や年金生活者にとって、これらは「質素な葬儀だと思われたくない」という世間体からくる、無視できない負担となっています [2]。伝統を重んじる高齢層には戸惑いもありますが、現代の生活リズムに合わせた「別れの形」への模索が始まっています。

ダナンのビーチで「おバカに踊る」完璧を目指さない新潮流

中部のリゾート地ダナンのミーケービーチでは、夕暮れ時になると不思議な光景が広がっています。17時、大音量の音楽に合わせて、30人ほどの集団がバラバラの動きで踊り狂う「ドーク・ダンシング(Dork dancing)」です [4]。直訳すれば「おバカなダンス」。あえて格好悪く、自由に体を動かすことでストレスを解消するこの活動が、外国人観光客と地元の若者の間でブームになっています。イギリスから来た31歳のロシュニ・ウォードさんは、このダンスに「中毒」になり、ダナンの滞在を1カ月延長しました [4]。彼女を驚かせたのは、このクラスが完全に無料であることです。イギリスでは同様の運動にはジムの会員登録と費用が必要ですが、ダナンでは4時の日の出前から夜遅くまで、誰でも公共の場で体を動かしています [4]。このコミュニティの魅力は、その包容力にあります。アメリカから来たジェシカ・ハリントンさんの息子は、ダウン症と自閉症を抱えていますが、ビーチで踊るたびに周囲の住民が手助けし、練習を導いてくれるといいます。「息子はこのコミュニティの一部になれた」と彼女は語ります [4]。完璧なステップを求めない「おバカなダンス」は、言葉や障害の壁を超え、人々の心を解きほぐしています。

背景を少し

ベトナムの日常を支える言葉の裏側には、日本とも共通する深いルーツがあります。ベトナム語の語彙の約6割は、漢字に由来する「漢越語(Hán Việt)」で構成されています [3]。例えば、木は「mộc(モク)」、枝は「chi(シ)」と呼ばれます。7月19日には、こうした漢字の知識を問うクイズがメディアで話題になり、「葉」を漢越語で何と言うか(正解は diệp / ヨウ)といった問いに多くの読者が関心を寄せました [3]。また、南部のメコンデルタ地方では、今も知恵を絞った伝統的な狩りが行われています。ヤシの木の高い場所に罠を仕掛け、実を食い荒らす「ココナッツネズミ」を捕らえるのです [6]。ヤシの実を食べて育つため肉質が綺麗だとされ、現地ではごちそうとして扱われます [6]。こうした漢字文化の継承や、自然の恵みを余さず享受する暮らしの知恵が、現代のベトナム社会の底流には今も息づいています。

日本から見ると

空港近くでの凧揚げや、深夜まで響く葬儀の音楽。これらを「マナー違反」と切り捨てるのは簡単ですが、そこにはコミュニティの絆を何よりも重んじるベトナム特有の熱量があります。一方で、ダナンのビーチで見られる「ドーク・ダンシング」のような、他者の目を気にせず、弱さや不格好さを共有する新しい連帯の形は、どこか日本の「盆踊り」がかつて持っていた開放感にも通じる気がします。漢字という共通の言語文化を持ちながら、表現されるエネルギーの方向は驚くほどダイナミックです。伝統を守ることと、近代的なルールに従うこと。その摩擦を恐れず、むしろ楽しむかのように日々を謳歌するベトナムの人々の姿は、効率や静寂を優先しがちな日本の都市生活に、心地よい刺激を与えてくれます。

出典

  1. [1]🇻🇳 ベトナムThả diều gần sân bay Cát Bi, hai bố con bị phạt 4,6 triệu đồngvnexpress.net
  2. [2]🇻🇳 ベトナムKiệt sức với những đám tang kéo dài hơn 72 giờvnexpress.net
  3. [3]🇻🇳 ベトナムLá cây trong tiếng Hán Việt gọi là gì?vnexpress.net
  4. [4]🇻🇳 ベトナムDork dancing - 'hot trend' mới của người nước ngoài ở Đà Nẵngvnexpress.net
  5. [5]🇻🇳 ベトナムHàng nghìn CĐV Việt đổ về công viên bờ sông Sài Gòn xem chung kết World Cupvnexpress.net
  6. [6]🇻🇳 ベトナムTrúng đậm khi đặt chuột trên ngọn dừavnexpress.net