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LOCAL NEWS · 世界のローカルニュース · 2026-07-13

新学期の席取り合戦と「父親不在」への警鐘――インドネシアの教育現場にみる親たちの熱狂と模索

インドネシアで7月13日、新学期が始まり、各地の学校で子供の教育を巡る親たちの多様な動きが見られました。西ジャワ州の小学校では、早朝から教室の最前列の席を確保しようと親たちが殺到し、机にカバンを縛り付ける独特の光景が広がりました。一方で、首都ジャカルタでは父親の積極的な学校関与を促す運動が展開され、伝統的な家族観の変革が模索されています。本稿では、教育と家族のあり方に熱い視線を注ぐ現代インドネシアの生活者の空気をお伝えします。

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リード

夜明け前の冷たい空気が漂う校庭に、開門を待つ親子の群れが静かに膨らんでいきます。7月13日、新学期初日を迎えたインドネシア各地の学校は、独特の熱気に包まれました[1][5]。ある地域では、開門と同時に教室へ駆け込み、我が子のために「一等席」を確保しようとする親たちの争奪戦が繰り広げられます[1]。その一方で、都市部では「父親が子供の学校生活にどう関わるか」という、家族の役割分担を巡る新しい模索が始まっています[5]。教育への情熱と、変化する家族のあり方。新学期という節目に映し出された、インドネシアの生活者たちのリアルな現在地を追いました。

門が開いたら教室へ猛ダッシュ、机にカバンを縛る親たちの執念

西ジャワ州インドラマユ県にあるケドカン・アグン第4公立小学校(SDN 4 Kedokan Agung)では、7月13日の早朝、夜明けの礼拝(サバハ)が終わった直後から、校門の前に多くの保護者と子供たちが集まりました[1]。まだ鍵がかかった門の前で、冷え込む空気の中でじっと待つ人々[1]。そして門が開いた瞬間、全員が一斉に教室を目指して走り出しました[1]。お目当ては、教室の最前列の座席です[1]。誰よりも早く到着した者が、我が子のためにその席を確保する権利を得ます[1]。席を確保した親たちは、持参したプラスチック製のラフィア紐を使い、子供のカバンを机や椅子にきつく縛り付けました[1][8]。中には机や椅子に直接子供の名前を書く親もいます[8]。この「カバン縛り」は、誰かに席を横取りされないようにするための確実な目印なのです[1][8]。この一見すると過激な座席争奪戦は、この学校で毎年のように繰り返されてきた伝統的な光景です[1]。保護者たちの間では「最前列の席に座れば、教師の授業に集中でき、成績が上がる」と信じられており、我が子の将来を思う親心がこの熱狂的な行動を支えています。

「父親不在」を防げ、新学期に始まったパパの登校同行運動

ところ変わって首都ジャカルタでは、同じ7月13日、全く異なるアプローチで親の役割が議論されていました。ジャカルタ特別州の教育局は、新学期の初日に父親が子供を学校まで送り届けることを推奨する「父親の学校送迎運動(GAMAS)」を展開しました[5]。この背景には、家庭内における父親の存在感の薄さ、いわゆる「ファザーレス(fatherless)」と呼ばれる社会問題への危機感があります[5]。ジャカルタ特別州の児童保護・人口管理・家族計画局(PPAPP)のドゥイ・オクタヴィア局長は、南ジャカルタの特別支援学校(SLBN 02 Jakarta)でのイベントで、これから結婚を控える若い男性たちに対し、事前に夫婦で育児のコンセプトを話し合い、父親としての役割を学ぶよう強く促しました[5]。ドゥイ局長は、「父親が家庭内で不在になってはなりません。子供の成長を見守り、妻と役割を分担し、教育の監督や道徳の指導に父親自身が関与する必要があります」と訴えました[5]。インドネシアでは伝統的に「父親は外で稼ぎ、母親が家を守る」という意識が根強く残っていますが、行政は「稼ぎ手」以上の役割を父親に求めて動き出しています。

映画『運動靴と赤い金魚』に憧れて、1000足の靴を届けるプロジェクト

新学期の始まりに合わせ、子供たちの足元を支える温かい社会活動も注目を集めました。ボゴール県パミジャハンにあるイスラム小・中学校で7月13日、恵まれない環境にある子供たちへ1000足の靴を贈る「#AlasKakiHarapan(希望の履物)」プロジェクトの発表会が行われました[6]。この活動を立ち上げたのは、慈善団体の「アヨ・マスク・スルガ(AMS)財団」と、現地の大手靴メーカー「カーヴィル(Carvil)」です[6]。AMS財団の創設者であるタダルス・クラニ氏が、かつて鑑賞したイランの名作映画『チルドレン・オブ・ヘブン(邦題:運動靴と赤い金魚)』に深く胸を打たれ、自身の貧しかった子供時代の記憶と重ね合わせたことがきっかけでした[6]。映画は、1足の靴を兄妹で分け合って登校する貧しい家庭の物語です。初日となった7月13日には、同校の児童・生徒に175足の靴と、それぞれ2足ずつの新しい靴下が直接手渡されました[6]。AMS財団の代表を務めるマウラナ・ムハンマド・ジブリル氏は、「一部の人にとって靴はただの学用品かもしれませんが、この子供たちにとっては、学校へ通い、夢を追いかけるための大切な相棒なのです」と語りました[6]

伝統の稲作にAIの風、カカシに代わるスマートカメラの登場

教育の話題に沸く一方で、インドネシアの主食である米作りにも大きな変革の波が押し寄せています。7月13日付の現地報道は、伝統的な田んぼに立つ「カカシ」が、近い将来に人工知能(AI)を搭載したスマートカメラや自動追い払い装置に置き換わる可能性を報じました[2]。インドネシア政府は現在、国家の最優先課題として「食料自給(スワセンバダ)」を掲げています[2]。その背景には、気候変動や地政学的リスクによる食料危機への懸念に加え、2024年8月時点で前年同期比121.34%増という急激な米の輸入増加が示す、国内生産力の伸び悩みがあります[2]。これまでの伝統的な農業では、予測困難な害虫の発生や気候変動に太刀打ちできなくなっています。そこで期待されているのが、AIによる病害虫の早期診断や、環境を破壊せずに鳥を追い払う精密デバイスの導入です[2]。泥にまみれた田んぼと最先端のアルゴリズムという一見ミスマッチな組み合わせが、同国の食卓の未来を担おうとしています。

日本から見ると

新学期初日の席取り合戦や、父親の育児参画を促す行政のキャンペーンは、日本の教育現場や家庭環境とも深く響き合うテーマです。日本では、学校の座席は教師が決めたり、くじ引きで決めるのが一般的であり、親が早朝から教室に忍び込んで席を確保するという光景は新鮮な驚きを与えます。しかし、「少しでも良い環境で学ばせたい」という親の執念そのものは、日本の受験戦争や習い事への熱量と地続きと言えます。また、「父親の不在」に対する危機感と、男性の育児休業取得や家事育児の分担を推進する日本の「イクメン」運動には、共通する社会的課題が見て取れます。伝統的な家族観を残しながらも、急速な近代化と技術革新の中で、より良い家族の形を模索するインドネシアの姿は、私たち自身の足元を見つめ直す鏡のようです。

出典

  1. [1]🇮🇩 インドネシアBerebut Bangku Depan, Tradisi Unik Hari Pertama Sekolah di Indramayurepublika.co.id
  2. [2]🇮🇩 インドネシアSawah Memasuki Era Kecerdasan Buatanrepublika.co.id
  3. [3]🇮🇩 インドネシアMahasiswi Aceh Barat raih medali di Singapura, olah sampah jadi sabunantaranews.com
  4. [4]🇮🇩 インドネシアHeboh Ditemukan Ikan Purba di Manadorepublika.co.id
  5. [5]🇮🇩 インドネシアDKI imbau catin pria miliki pengetahuan pola asuh hindari "fatherless"antaranews.com
  6. [6]🇮🇩 インドネシアTerinspirasi dari 'Children of Heaven', Seribu Pasang Sepatu Disalurkan ke Pelosok Indonesiarepublika.co.id
  7. [7]🌐 Web検索Kompas.tvkompas.tv
  8. [8]🌐 Web検索iNews.idinews.id