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LOCAL NEWS · 世界のローカルニュース · 2026-08-18

キノコが国家の「第三の王国」に——豪州の自然保護が踏み出す新たな一歩

オーストラリア与党の労働党が8月17日、国家政策指針において菌類(キノコ)を動植物と並ぶ独立した保護対象として明記することを決定しました。世界的な人気アニメ「ブルーイ」の影で進む国内番組制作の危機や、絶滅したタスマニアタイガーの剥製発見など、今週のオーストラリアからは独自の自然観と文化の変容が浮かび上がります。環境保護の新たな枠組みからエンターテインメントの転換点まで、南半球の「今」を読み解きます。

ローカルニュース太平洋(豪州・NZ)6本のローカル記事から

リード

冬の終わりを告げる風が吹き抜けるオーストラリアの街角で、今週、人々の話題は足元の小さな生命から、はるか昔に絶滅したはずの野生動物、そしてテレビ画面の向こう側の未来へと目まぐるしく移り変わっています。8月17日、オーストラリア労働党が全国大会で「菌類(キノコ)」を動植物と並ぶ生態系の柱として公式に認めたことは、単なる科学的分類の変更を超え、この国の自然保護のあり方を根本から変える可能性を秘めています[1]。一方で、アンティーク市で「動く目玉がついたキツネの剥製」として二束三文で売られていた物体が、実は絶滅したタスマニアタイガーの頭部だったという驚きのニュースが飛び込み、人々の想像力を刺激しています[2]

キノコが政治の主役に——「第三の王国」への格上げ

オーストラリアの環境保護政策に、歴史的な転換点が訪れました。8月17日、与党・労働党は国家プラットフォームを改訂し、菌類(Fungi)を植物(Flora)や動物(Fauna)と並ぶ、自然環境の独立した構成要素として明記しました[1]。これまで「動植物」という言葉の陰に隠れがちだったキノコやカビなどの菌類が、ついに「第三の王国」として法的な保護の土俵に上がったのです。この決定を主導した一人、ニューサウスウェールズ州バリー支部の草の根党員であり、市民科学団体「ファンギマップ」のメンバーでもあるキャサリン・マルシニアック氏は、長年のロビー活動の実りを喜んでいます[1]。背景には、ケンブリッジ辞典が特定の地域の菌類群を指す言葉として「フンガ(Funga)」を新録したという世界的な潮流もあります。マレー・ワット連邦環境相は大会で、「菌類は私たちの生態系に不可欠であり、環境保護の枠組みにこれを反映させることは極めて重要だ」と強調しました[1]。今後は、連邦環境保護・生物多様性保全法(EPBC法)の改正も視野に入っています。地下で数百万年にわたり、人間がようやく理解し始めたばかりのネットワークを築いてきた菌糸体(マイセリウム)にとって、政党の承認など関心事ではないかもしれません。しかし、この「地上のルール」の変更により、これまで見過ごされてきた菌類の生息地保護に予算や法的根拠が与えられることになります[1]

ポンドの「キツネ」が11万ドルの「絶滅種」に

英国のアンティーク市で、いたずらで「動くおもちゃの目玉(googly eyes)」を貼り付けられた、出来の悪いキツネの剥製が売られていました。匿名の出品者が3カ月前にわずか50ポンド(約1万円)で衝動買いしたこの「珍品」が、8月18日までに実施されたオークションで、当初予想を大幅に上回る6万2000ポンド(約11万8000豪ドル、約1200万円)で落札され、豪州中を驚かせています[2]。この剥製の正体は、1936年に絶滅したとされるオーストラリア固有種、タスマニアタイガー(フクロオオカミ)の頭部でした。落札したのはエセックス州の剥製愛好家、ジェームズ・クランフィールド氏(38)です。彼はカタログ写真の歯の形状から、これが「一生に一度の発見」であることを確信したといいます[2]。競売当日、ブリストルの競売場「オークショニアム」には、正体に気づいた数人の入札者が集まり、会場は異様な熱気に包まれました。落札価格が6万ポンドを超えた際、元の持ち主はあまりの衝撃に椅子を勧められるほど動揺していたといいます[2]。タスマニアタイガーの標本は極めて希少で、過去には敷物に加工された皮が取引された例がある程度です[2]。かつては「厄介者」として駆除の対象だった動物が、今や失われた野生の象徴として、熱狂的な価値を持って迎えられています。

「ブルーイ」の陰で進む、子供向け番組の静かな危機

オーストラリアのアニメ「ブルーイ」は、過去2年間にわたり米国で最もストリーミングされた番組となるなど、世界を席巻しています。しかし、8月18日に発表された政府機関スクリーン・オーストラリアの調査報告書「スクリーン・カレンシー2026」は、この華々しい成功の裏にある深刻な影を浮き彫りにしました[3]。報告書によると、2021年から2024年の豪州国内における子供向け番組の年間平均放送時間は65時間で、2000年から2020年の平均と比べて42%も激減しました[3]。原因は、政府が商業放送局に課していた「年間260時間以上の子供向け番組放送義務」を撤廃したことにあります。セブン、ナイン、テンの主要3局は、このジャンルの新規制作を事実上停止しており、現在は公共放送のABCがその役割を辛うじて支えている状態です[3]。一方で、ネットフリックスやアマゾン・プライム・ビデオなどの配信大手は、豪州国内の収入の一定割合を地元コンテンツに投資する法的義務があるため、ドラマ制作の主要な担い手となっています[3]。しかし、商業放送局の予算はニュースやスポーツ、ライフスタイル番組に集中しており、次世代の「ブルーイ」を生み出すための土壌が国内で急速に失われていることへの懸念が広がっています[3]

日本から見ると

キノコを「動物・植物」と並ぶ独立した保護対象とする豪州の動きは、自然を「資源」や「景観」としてだけでなく、目に見えないネットワークの集合体として捉え直す視点を与えてくれます。日本ではキノコは食文化や山歩きの楽しみとして身近ですが、それを国家レベルの「生物多様性戦略」の主役に据えるという発想は、環境先進国を自負する豪州ならではのダイナミズムを感じさせます。また、タスマニアタイガーの剥製を巡る熱狂や、子供向け番組の制作危機は、文化の「保存」と「継承」の難しさを物語っています。一度失われた種は二度と戻らず、一度途絶えた制作基盤を再建するには膨大な時間がかかります。世界的な成功作があるからといって、その足元の文化が安泰とは限らない。コンテンツ大国を自認する日本にとっても、制度の変更が生態系(エコシステム)をどう変えてしまうかという豪州の事例は、決して他人事ではありません。

出典

  1. [1]🇦🇺 豪州Fungi fans celebrate its recognition as nature's third living kingdomabc.net.au
  2. [2]🇦🇺 豪州‘Holy grail’: Googly eyed ‘stuffed fox’ sold at antiques fair identified as a Tasmanian tigersmh.com.au
  3. [3]🇦🇺 豪州Australian-made children’s TV brought to heel as homegrown series commissions plummettheguardian.com.au
  4. [4]🇦🇺 豪州Gang of Youths are back: ‘Does it sound like a cynical gesture towards pop radio stardom?theguardian.com.au
  5. [5]🇦🇺 豪州‘Don’t call it a rebel league’: Inside surfing’s new $20m Big Bash-style compsmh.com.au
  6. [6]🇦🇺 豪州‘Don’t overthink it’: Simone Young on Mahler, AI and the SSO’s fearless futuresmh.com.au