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LOCAL NEWS · 世界のローカルニュース · 2026-08-05

AIが脳の言語を解読する——先端技術と歴史が交錯するイスラエルの今

イスラエルで8月5日、脳波データを解析して精神疾患を主観に頼らず診断するAIモデルが発表された.戦乱や反ユダヤ主義の高まりの中で生きる人々を描くコメディ映画が話題を呼び、海外では消滅した歴史的シナゴーグの遺構を巡る論争が続く一方、建国の父テオドール・ヘルツルの祖父母の遺骨がエルサレムに改葬された。最先端の医療技術と、何世代にもわたり紡がれてきた歴史や文化の継承に揺れる市民の姿は、困難な時代において自らのアイデンティティとどう向き合うべきかという問いを日本の読者にも投げかけている。

ローカルニュース中東・北アフリカ6本のローカル記事から

リード

テルアビブのハイテク企業が立ち並ぶビル群から、エルサレムの古めかしい石造りの街並みまで、イスラエルでは日々、未来への技術革新と過去の記憶が交錯している。8月5日、現地では精神疾患の診断を一変させようとする人工知能(AI)の試みが報じられた[1]。一方で、映画館では社会の重苦しい空気を吹き飛ばすようなコメディ作品が封切られ、人々に束の間の笑顔をもたらしている[2]。古代から続く歴史的ルーツと、最先端テクノロジー.その双方を抱えながら暮らす人々の、今この瞬間の表情を追った。

AIが「思考」を読み解く時代へ

精神科の診察室で、医師から「今の気分はどうですか」と問われ、神経科医から「指先で自分の鼻に触れてみてください」と促される[1]。そうした問診や試行錯誤の観察に頼ってきた精神疾患や神経疾患の診断に、データに基づく客観性をもたらそうとする試みが動き出した[1]。イスラエルのスタートアップ「ヘミスフェリック(Hemispheric)」が8月5日に公開したAIモデル「デカルト(Descartes)」だ[1]。同社の最高技術責任者(CTO)ジディ・リットウィン氏と最高経営責任者(CEO)ハガイ・ララザー氏は、Appleの「FaceID」開発者と計算神経科学者という異色のコンビで、6年以上にわたり研究を重ねてきた[1]。10万人分の脳波(EEG)データを学習したAIは、脳の電気信号という「言語」を解読し、うつ病やPTSD(心傷的ストレス障害)などの状態を翻訳するという[1]。ララザー氏は「脳は体の中で最も複雑な臓器でありながら、その機能や健康状態を非侵襲的かつ定量的に測定する手段がなかった」と語る[1]。ただし専門家からは、技術の有効性はまだ証明されていないとの慎重な見方も出ている[1]

悲劇の中で描く「ユダヤ人の喜び」

戦乱や反ユダヤ主義の高まりにより、厳しい現実に直面するユダヤ人社会に対し、映画を通じて「笑い」と「喜び」を届けようとする動きがある[2]。ニューヨークを拠点とする映画監督レイチェル・イスラエル氏は、8月5日までにコメディ映画『ザ・フローターズ(The Floaters)』と『インフルエンスト(Influenced)』の2作品を相次いで手がけた[2]。『ザ・フローターズ』はユダヤ人のサマーキャンプを舞台に、女優ジャッキー・トーン氏らが演じる若者たちの友情や家族愛を描いた作品だ[2]。劇評家のネル・ミノー氏は「表面下に魅力的なユダヤの魂(ネシャマ)が覗いている」と評した[2]。イスラエル監督は「ユダヤ人のアイデンティティだけをテーマにするつもりはなかったが、自然とそうなった」と振り返る[2]。2023年10月7日のパレスチナとの衝突以降、防衛的な姿勢を強いられる局面が増える中、同監督は敵意に対抗する手段として「ユダヤ人の喜び(Jewish joy)」を温かく肯定する物語を世に送り出している[2]。映画館に流れる観客の笑い声は、傷ついた人々の心を解きほぐす役割を果たしている[2]

失われた歴史の断片と記憶の継承

イスラエル国外に眠るユダヤ文化の遺産をどう残すかという問題も、現地で強い関心を集めている[3]。かつて「北のエルサレム」と称されたリトアニアの首都ヴィルニュスで、17世紀に建てられた「グレート・シナゴーグ」の全容が発掘調査によって明らかになった[3]。1940年以来初めて、ピカピカと光る色鮮やかな床面や祈祷台の全体が姿を現した[3]。第二次世界大戦前のヴィルニュスは人口の約40%をユダヤ人が占め、100を超えるシナゴーグが存在した[3]。しかし、ホロコーストにより90%以上のユダヤ人が命を落とし、1944年から1990年のソ連占領期に街の姿は大きく書き換えられた[3]。現在、3,000人未満となった現地ユダヤ人コミュニティの代表団体は、発掘された床面をガラス越しに見せる地下展示を備えた新たなコミュニティセンターの建設を計画している[3]。これに対し、正統派ユダヤ教徒らは礼拝堂としての再建や純粋な遺跡保存を主張し、一部の住民は全市民に向けた人権啓発の場にすべきだと訴えるなど、継承のあり方を巡って議論が紛糾している[3]

年越しに揃った家族の遺骨

歴史の記憶を巡る動きは、エルサレムのヘルツル山でも一つの結実を迎えた[4]。8月5日、近代政治シオニズムの祖テオドール・ヘルツルの祖父母、シモン・リーブ・ヘルツル氏とリフカ・ヘルツル氏の遺骨が、セルビアのゼムンから移送され、ヘルツル山に埋葬された[4][6]。ヘルツル自身の遺骨が同地に改葬されてから、ヘブライ暦でちょうど77年目の節目の日だった[4]。国家式典にはアイザック・ヘルツォグ大統領やベンヤミン・ネタニヤフ首相、世界シオニスト機構(WZO)幹部、セルビア政府関係者らが参列した[4]。祖父シモン・リーブ氏は、シオニズムの先駆者であるイェフダ・アルカライラビのシナゴーグで役員を務めた人物だった[4]。ヘルツォグ大統領は式典で「夢は書かれた遺産として受け継がれるのではない。安息日の食卓や、祖父が孫に語る物語の中で受け継がれる」と語り、祖父母が家庭内で育んだ精神がヘルツルの思想に与えた影響を称えた[4]。長年の懸案だった家族の再会が果たされたことで、建国の物語に新たな1ページが加わった[4]

背景を少し

イスラエルが日常の細やかな物語と最先端技術の双方で注目される背景には、過酷な歴史の中で培われた強いコミュニティの絆と、社会課題を技術で解決しようとする精神がある。医療分野でもその動きは顕著だ。8月5日、大手医療機関のアスタ・メディカル・センターとマイクロソフトは、医師の事務作業を軽減するAIアシスタントの共同開発を発表した[5]。診察前に患者の膨大な過去データや薬歴のサマリーを自動生成し、診察中の会話を録音・文書化してカルテの原案を作成する[5]。医師が電子カルテの画面切り替えや書類探しに追われる時間を減らし、患者と直接向き合う診察時間を確保するのが狙いだ[5]。責任は最終的に医師が負う前提だが[5]、脳波解析AI(Descartes)[1]と並び、医療の質を高める技術への強い期待がうかがえる。

日本から見ると

AIによる医療支援や脳波解析といった最先端テクノロジーの社会実装において、イスラエルのスピード感には目を見張るものがある。一方で、歴史的建造物の保存を巡る対立や、過酷な情勢の中でも「笑い」を大切にする映画文化からは、コミュニティの記憶をどのように未来へつなぐかという普遍的な葛藤が伝わる。技術によって未来の医療を切り拓きながら、祖父母の遺骨を迎えて自らのルーツを再確認する彼らの姿は、変化の激しい時代において過去の記憶と先進技術をどう両立させて生きるかという視点を与えてくれる。

出典

  1. [1]🇮🇱 イスラエルIsraeli startup looks to harness AI to decode the ‘language’ of the braintimesofisrael.com
  2. [2]🇮🇱 イスラエルWith two current films, director Rachel Israel offers comic relief for Jewish traumajpost.com
  3. [3]🇮🇱 イスラエルArchaeologists uncover treasures of Vilnius’ Great Synagogue as Lithuanian Jews dispute its futurejpost.com
  4. [4]🇮🇱 イスラエルHerzl's grandparents laid to rest alongside Zionist leader on Mount Herzljpost.com
  5. [5]🇮🇱 イスラエルAssuta, Microsoft develop AI medical assistant to reduce relieve doctors' documentation tasksjpost.com
  6. [6]🌐 Web検索One road to Jerusalem began in Semlin - Israel & Jewish News - JNSjns.org