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LOCAL NEWS · 世界のローカルニュース · 2026-07-26

コペンハーゲンの風刺から北極圏の劇場まで——デンマークの日常が揺らす「男性性」と「文化」

デンマークの新聞大手ポリティケンは2026年7月26日付の紙面で、コペンハーゲンの若者文化をあざ笑うSNS風刺から、19世紀の文学者に翻弄された女性作家の悲劇、強い男性像に揺れる現代画家の視点、さらに超大型映画を巡る文化戦争まで多様な論題を取り上げた。北欧最古の伝統と最先端の都市感覚が交錯する中で、いま現地の人々は何に心を揺さぶり、何に議論を戦わせているのか。デンマーク社会の等身大の暮らしと価値観の変化を読み解く。

ローカルニュース北欧6本のローカル記事から

リード

コペンハーゲンのノレブロ地区にあるカフェ「フリーヘデン(Friheden)」のテラス席では、フルーティーで甘酸っぱいサワービールのグラスがぶつかり合い、若者たちの笑い声が響く。お互いを軽やかに「スキャット(愛しい人)」と呼び合い、再会を祝して濃厚なキスを交わす彼らの手元には、コードがついた旧世代のアップル製イヤホンが握られている。2026年7月26日、現地紙ポリティケンは、こうした首都独特の若者文化や歴史的スキャンダル、さらには古典論争に至るまで、生活者の関心を集める多様なトピックを相次いで報じた[1][2][5]。豊かな福祉国家として知られるデンマークだが、その路上や食卓、あるいは劇場の暗がりでは、現代ならではのアイデンティティやジェンダー観を巡る複雑な会話が繰り広げられている。都市の日常風景から、現地の人々がいま何を面白がり、何に苛立っているのかをたどる[1][4]

SNSで大バズり、「コペンハーゲン女子」の痛いリアル

コペンハーゲンに暮らす人々なら、思わず苦笑いしてしまう「あるある」が存在する。インスタグラム上で3人の友人が投稿を始めたアカウントが、首都特有の若者グループを露骨に風刺して話題を呼んでいる[1]。コラムニストのマティルデ・ヘブスゴール・ルンドが2026年7月26日の同紙で紹介したところによると、その風刺の標的は実に具体的だ[1]。彼女たちは会話の二言目には互いを「スキャット」と呼び、前述のノレブロ地区のカフェ「フリーヘデン」でサワービールを飲み交わす[1]。女性の身体についての詩を書き、タロットカードを重ね、2000年代の古着しか買わない[1]。「有害な男性(トキシック・メン)」について熱弁を振るう一方で、あえて有線のアップル製イヤホンをつけることが「最新のトレンド」だと信じ込んでいる[1]。ルンドはこのグループを「地獄からの仲良しグループ」と形容しつつも、「恐ろしいほどによく見かける」と評する[1]。過剰なまでに進歩的でレトロを好む若者たちの自意識は、見ている側には痛々しくも、どこか憎めない愛嬌として市民の共感を呼んでいる[1]

年の悲劇、19世紀の知の巨頭は「プレイボーイ」だった

首都の路上で交わされる若者たちの恋愛観は、過去の悲劇の再解釈にも向けられている。2026年7月26日のポリティケン紙で論じられたのは、19世紀デンマークの代表的な思想家ゲオルグ・ブランデスと、スウェーデンの女性作家ヴィクトリア・ベネディクトソンの関係だ[2]。1888年、ベネディクトソンはコペンハーゲンの「ホテル・レオポルド」の一室で、剃刀と手鏡を持ち、自らの首に平行な4本の切り傷をつけて命を絶った[2]。彼女の自殺は単一の理由によるものではなかったが、自由精神と自由恋愛を唱えていたブランデスとの「実らない不可能な愛」が深く影を落としていたとされる[2]。記事は現代の恋愛用語を用いて、ブランデスを「元祖ファックボーイ(遊び人)」と呼び切る[2]。自由恋愛を掲げて女性たちを魅了しながらも、決して責任を取ろうとしなかった思想家の身勝手さは、近代の知の巨頭という従来の評価を塗り替え、自立を目指した女性作家の自由を奪った存在として批判的に語り直されている[2]

「男らしくあれ」の呪縛、スーツを着た男が転ぶ瞬間

過去の恋愛劇から現代のジェンダー観へと視点を移すと、デンマークの男性たちが直面する新たな葛藤が見えてくる。画家のペーター・ラウンは20年以上にわたり、スーツを着た男性がコントロールを失い、滑ったり転んだりしてバランスを崩す瞬間を描き続けてきた[4]。写真家ミリアム・ダルスゴールが撮影した近影とともに2026年7月26日の同紙インタビューに登場したラウンは、自身の原体験を振り返る[4]。ラウンは「私はまさに、自分が非常に苛立たしい弱虫(tøsedreng)だとみなす、とても男性的な父親のもとで育った」と語る[4]。子供の頃、背筋を伸ばし、胸を張り、顎を上げることを叩き込まれた彼にとって、絵を描くことは「世界を理解するための手段」だった[4]。ラウンは、男性に力を与えるはずのスーツが同時に「牢獄」としても機能していると指摘する[4]。現代の男性には「柔らかさ」と「強さ」の両方が求められており、内側を向いた足元や傾く体に、その抑圧と解放のゆらぎが表れている[4]

年前の叙事詩に「ポリコレ」批判、ノーラン新作の火種

現代の価値観を巡る議論は、ハリウッド映画の最新作を巻き込んだ文化戦争へと発展している。映画監督クリストファー・ノーランの新作『The Odyssey(オデュッセイア)』が公開されるやいなや、現地では猛烈な賛否両論が巻き起こっている[5]。2026年7月26日のポリティケン紙によれば、2700年前の古代ギリシャの英雄叙事詩を原作とするこの大作に対し、公開前から批判が殺到していた[5]。配役が過剰に政治的正しさ(いわゆる「ウォーク」)を意識しているという不満から、衣装や歴史的事実との整合性、さらには出演俳優ゼンデイヤが身につけているピアスの形状にまで攻撃の矛先が向いている[5]。映画評論家は、歴史的言説の正しさとエンターテインメントの表現が衝突する現代特有の「文化戦争」の縮図だと分析している[5]。古代の古典を通じて、人々はいま自分たちの文化的アイデンティティや歴史の所有権を巡って熱い議論を交わしている[5]

背景を少し

デンマークにおける演劇や物語の受容には、独自の文脈が存在する。18世紀の劇作家ルドヴィヴィ・ホルベアが1722年に執筆した代表作『Jeppe på Bjerget(山上のイェッペ)』は、架空の村「ビヤーゲト」に暮らす大酒飲みの小作農イェッペを主人公とした古典コメディだ[6]。権力者に弄ばれる庶民の姿を風刺したこの作品は、デンマーク文化の「自虐とユーモア」の原点とされる[6]。しかし、この伝統的な戯曲が異文化と出会う現場では、激しい摩擦が生じることもある。演劇評論家のトマス・ブレズドルフが2026年7月26日のポリティケン紙で明かした連載記事によれば、2008年に北極圏に位置するグリーンランドのシシミウトでこの一人劇を上演した際、現地での受け止め方を巡り「大トラブル(gik det helt galt)」が発生したという[3]。本国では普遍的な笑いとされる演出が、過酷な自然とともに生きる先住民コミュニティの現実や歴史的文脈の前では、全く異なる意味を持ち得ることが如実に示された瞬間だった[3]

日本から見ると

コペンハーゲンの路上で若者が「有線イヤホン」をレトロなトレンドとして身につけ、SNSで互いのポーズを風刺し合う姿は、日本の都市部で若者文化が消費される構図と非常によく似ている。だが、その根底にある「ジェンダー観の捉え直し」や「伝統への批判」の鋭さには、北欧独特の率直さがある。1888年の文豪の恋愛を現代の言葉で容赦なく解体し、かつて「男らしさ」を強要された画家がスーツを着た男性の挫折を作品化する姿勢は、固定観念から抜け出そうとする社会の強い意志を感じさせる。一方で、超大型映画における多様性配役への反発や、極地グリーンランドでの演劇上演の衝突に見られるように、伝統的な価値観と現代的視点の摩擦はどこでも簡単に解けるものではない。日本においても、昭和的な男性像や価値観の更新が模索される中、デンマークの人々が身近なカルチャーを通じて旧来の規範を問い直す姿は、決して他人事ではない問いを投げかけている。

出典

  1. [1]🇩🇰 デンマークDu kender helt sikkert typen, hvis du bor i Københavnpolitiken.dk
  2. [2]🇩🇰 デンマークGeorg Brandes var den oprindelige fuckboipolitiken.dk
  3. [3]🇩🇰 デンマークI Grønland gik det helt galt, da vi spillede 'Jeppe på Bjerget'politiken.dk
  4. [4]🇩🇰 デンマーク»Jeg voksede jo selv op med en meget maskulin far, som syntes, jeg var en utrolig irriterende tøsedreng«. I dag undersøger Peter Ravn, hvad der sker med mænd, når de både skal være bløde og stærke.politiken.dk
  5. [5]🇩🇰 デンマークDerfor vækker Christopher Nolans nye film så meget vredepolitiken.dk
  6. [6]🌐 Web検索Jeppe på Bjerget - Wikipedia, den frie encyklopædida.wikipedia.org