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DEEP READ · 深読み · 論文の窓 · 2026-07-20

論文の窓:EUがAliExpressに5億5000万ユーロの罰金、違法製品の流通を放置

欧州連合(EU)は7月20日、中国の電子商取引大手AliExpressに対し、5億5000万ユーロ(約6億2900万ドル)の記録的な罰金を科した。同プラットフォーム上で、偽造品や安全基準を満たさない玩具、化粧品などの違法製品の販売を十分に阻止できなかったことが理由だ。デジタルサービス法(DSA)に基づく今回の決定は、巨大プラットフォームの社会的責任を問う動きを象徴して。

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リード

欧州連合(EU)は7月20日、アリババ傘下のオンライン小売大手AliExpressに対し、5億5000万ユーロ(約6億2900万ドル)の罰金を科した[1][4]。これは、同プラットフォーム上で違法な製品や偽造品、安全基準を満たさない商品の販売を阻止するための対策が不十分であったことを理由とする[1][4]。EUのデジタルサービス法(DSA)の下で科された罰金としては、過去最大規模となる[4]。今回の決定は、巨大プラットフォームが抱えるコンテンツ管理や安全性確保の責任を、規制当局がいかに厳格に追及するかを示す事例となった。

何が起きたか

EU委員会は7月20日、AliExpressが違法製品の流通リスクを評価し、軽減するというDSAの核心的な要求を遵守していなかったとして、巨額の罰金を科した[1][5]。EUの調査によれば、AliExpressは偽造された衣類や、安全性を欠く玩具、危険な化粧品などが、検知されてから数週間にわたって販売され続けている状態を放置していた[2][6]。また、同プラットフォームは、潜在的に違法な製品を審査するための人員が不足していたことも指摘されている[2][3]。さらに、違法な製品がプラットフォームから削除される前に、アルゴリズムによって推奨や広告の対象となっていたことも判明した[3][8]。AliExpressは今回の決定に対し、罰金は不釣り合いであるとして異議を唱えている[1][5]。同社は、すでに実施している対策が適切に反映されていないと主張している[1]。EUはAliExpressに対し、10月20日までに是正措置案を提出するよう命じており、その内容が不十分な場合にはさらなる罰金が科される可能性がある[1][7]

研究が示してきたこと

プラットフォーム規制の動向について、2024年のRobert Gorwaの研究[9]は、巨大な多国籍テクノロジー企業がオンライン上の表現や行動、相互作用を管理する「コンテンツ・モデレーション」や「プラットフォーム・ガバナンス」が、政府の規制対象となっている現状を分析している。Gorwaは、政府が抱える問題に対し、「説得」「協力」「対抗」という3つの戦略が存在することを示し、政治的文脈や規制の事例に応じて、これらの戦略がどのように採用されるかを理論化している[9]。また、電子商取引における商標権保護の観点からは、2024年のAnna Pokrovskayaの研究[10]が、デジタルエコシステムの急速な進化に伴う課題を指摘している。Pokrovskayaは、偽造品の販売や無許可の販売者、グレーインポート、サイバースクワッティングといった商標権侵害の主要な類型を検討している[10]。同研究は、ブランド所有者とプラットフォームの両方が、オンライン市場におけるこれらの侵害に対抗するためにどのような戦略を用いているかを明らかにしようとしている[10]

ニュースを研究で読み直す

今回のAliExpressへの罰金は、Gorwaが示した「対抗(contesting)」という規制戦略の具体的な現れと言える[9]。EUは、プラットフォームが自律的にリスクを管理できていないと判断し、法的な強制力をもって介入した[1][4]。特に、違法製品がアルゴリズムによって推奨されるという問題は、プラットフォームの設計そのものがリスクを増幅させていることを示しており、規制当局が「プラットフォーム・ガバナンス」の不備を突いた形となった[9]。また、Pokrovskayaが指摘した商標権侵害や偽造品の流通問題が、AliExpressにおいて構造的な課題となっていることも今回の事象から読み取れる[10]。EUの調査では、偽造品がブランド所有者の正当な投資を阻害していることが示唆されており、これはPokrovskayaが論じた文脈に合致する[2][6][10]。AliExpressが「人員不足」を理由に管理が不十分であったという指摘は、デジタルプラットフォームが直面する、技術的・人的リソースの管理と法的義務の間の乖離を浮き彫りにしている[3][7]

残された問い

今回の事象は、プラットフォーム規制における新たな課題を突きつけている。Gorwaの研究が示した「説得」や「協力」といったアプローチでは、今回のような大規模な違反を未然に防ぐには不十分である可能性が示された[9]。では、規制当局が「対抗」戦略を強化し続けた場合、プラットフォーム側の技術的・組織的な対応は、規制のスピードに追いつけるのだろうか。また、Pokrovskayaが論じた商標権侵害の複雑な問題に対し、プラットフォーム側が「人員不足」を理由に管理を怠ることは、単なる運用上のミスなのか、それともビジネスモデルに起因する構造的な問題なのかという問いも残る[10]。AliExpressが提出する10月20日までの是正策が、単なる形式的なものに留まるのか、それとも実効性のあるシステム構築につながるのかが、今後の規制の有効性を占う鍵となる[1][7]

日本から見ると

今回のEUによる巨額罰金は、日本の電子商取引市場にとっても無視できない意味を持つ。日本でも、偽造品や安全性の低い製品の流通は消費者保護の観点から重要な課題である。EUがデジタルサービス法(DSA)を用いて、プラットフォームの「リスク評価と軽減」の義務を厳格に適用したことは、今後の世界の規制の標準(グローバル・スタンダード)となる可能性がある[1][4]。日本の事業者や消費者は、プラットフォームが単なる「場」の提供者ではなく、流通する製品の安全性や権利保護に対して法的責任を負う主体として、より強く位置づけられつつある現状を認識する必要がある。特に、アルゴリズムによる推奨機能が違法製品を拡散させるリスクについては、技術的な設計段階からの検討が求められる局面に来ている[3][8]。こうした規制の強化は、日本のプラットフォーム運営者にとっても、コンプライアンス体制の再構築を迫る重大な転換点となるだろう。

出典

  1. [1]🇧🇷 ブラジルAliExpress é multado em US$ 629 milhões pela UE por vendas de produtos ilegais e falsificadosvalor.globo.com
  2. [2]🇨🇭 スイスRekordstrafe gegen Onlineshop: Aliexpress muss 550 Millionen Euro wegen illegaler Produkte zahlentagesanzeiger.ch
  3. [3]🇨🇱 チリUnión Europea multa a AliExpress con 550 millones de euros por no combatir venta de bienes ilegalesbiobiochile.cl
  4. [4]🇨🇳 中国EU fines AliExpress US$630 million over illegal productsscmp.com
  5. [5]🇨🇴 コロンビアLa UE impone multa récord a AliExpress por vender productos ilegaleselespectador.com
  6. [6]🇩🇪 ドイツWegen gefälschter Waren – EU verhängt 550-Millionen-Strafe gegen Aliexpresswelt.de
  7. [7]🇩🇪 ドイツAliExpress hit with record EU finedw.com
  8. [8]🇪🇪 エストニアEuroopa Komisjon määras Aliexpressile 550 miljoni eurose trahvierr.ee
  9. [9]📄 論文The Politics of Platform Regulationopenalex
  10. [10]📄 論文Protection of Trademark Rights on E-commerce Platforms: An Updated OutlookJournal of Comprehensive Business Administration Research