リード
8月のローマ、コロッセオを望むオッピオの丘に足を踏み入れると、ストーンの走る乾いた音が耳に届く。真夏の陽射しが石畳を焦がす中、旅人たちが歓声を上げるのは、プラスチックのシートの上で繰り広げられるカーリングだ[3]。スペインで皆既日食が観測される前夜にあたる8月10日には、1999年以来の欧州での天体ショーに沸く観光熱がコラム欄を飾り[1]、折りたたみiPhoneの最新計画や、ハリー・ポッターの墓を守るファンの奇跡のような話が紙面をにぎわせた[4][5]。観光大国のイタリアで、今夏の人々の関心は伝統とテクノロジー、ポップカルチャーの間を軽やかに行き交っている。
コロッセオの麓にストーンの響き——真夏のカーリング場
古代ローマの遺跡群が照りつける7月、オッピオの丘の小さな公園に出現したカーリング場を、ニューヨーク・タイムズ(NYT)は「汗だくで古代モニュメントを歩いた先で、夏にウィンタースポーツに出くわすとは」と驚きをもって紹介した[3]。これを仕掛けたのはイタリアの公共スポーツ振興会社スポルト・エ・サルーテ。2026年ミラノ・コルティナ冬季五輪の熱気を街なかに持ち込もうと企画し、同社CEOディエゴ・ネピ・モリネリスは「五輪の後、誰もがカーリングを試す夢を抱いた。私たちはその夢を実現させた」と語った[3]。リンクは高密度プラスチック製で、長さ約12メートル、幅約3メートルと本格的な競技用より一回り小さい。ストーンの重さも規定の10分の1ほどで、ブラシは石の回収に使われる[3]。ネピ・モリネリスは「最も象徴的な場所、おそらくイタリアで最も象徴的な場所で、マイナーとレッテルを貼られるスポーツさえも壮大になり得る」とその意図を説明し、「どんなスポーツも素晴らしい。マイナーに見せているのは私たちの方だ」とも言い切った[3]。観光客たちは古代の円形闘技場を見下ろしながら、冷涼な競技の疑似体験に興じている。
「自由なしもべ妖精」を守れ——ドビーの墓が海底ケーブルを迂回させた
「ここにドビー、自由なしもべ妖精が眠る」——そう記されたウェールズ、フレッシュウォーター西海岸の石碑を守るため、ハリー・ポッターファンが巨大インフラ計画を動かした。レプッブリカ紙が8月11日に伝えたところによると、大西洋横断の海底通信ケーブル敷設ルートが、まさにこの「ドビーの墓」を避けて変更されたという[5]。J.K.ローリングの小説に登場する妖精ドビーは、最終巻で非業の死を遂げ、この浜辺で弔われた。映画のロケ地として知られるようになると、世界中のファンが訪れ、自然発生的に石を積み上げた墓が聖地化した。ケーブル敷設計画が浮上した際、この「墓」の真上をルートが通過することが判明し、ファンの抗議が殺到。結果的に事業者が迂回を決断した[5]。記事は「夢を見られるなら、実現できる」というウォルト・ディズニーの言葉を引き、フィクションを現実に押し上げたファンの熱量を「信じがたいが真実の物語」と結んだ[5]。ポップカルチャーが、巨額の国際事業よりも優先された珍しい事例である。
アップル、初の折りたたみiPhoneへ——第3世代までの長期戦略
年内発売が見込まれるアップルの折りたたみiPhoneについて、同社がすでに第3世代までの開発計画を固めていることが8月10日、ブルームバーグ通信によって報じられた[4]。著名アナリストのマーク・ガーマン氏によれば、初号機「iPhone Ultra」は7.8インチの内側ディスプレイと5.5インチの外側パネルを備え、価格は2,000ドル(約30万円)を超える見込みだ[4]。供給網の混乱やRAM不足の影響で初期出荷は限られるが、同社の計画は2027年のiPhone誕生20周年に合わせた第2世代モデルの投入、そして2028年の第3世代では画面サイズをさらに拡大する青写真を描く[4]。調査会社IDCとカウンターポイント・リサーチの試算では、アップルの参入初年度における折りたたみ端末市場のシェアは22〜25%に達し、サムスンの32%、華為技術(ファーウェイ)の24%に迫ると予測されている[4]。ハードウェアの熟成と市場形成をにらみながら、クパチーノの巨人は数年がかりの陣取りを開始しようとしている。
背景を少し
こうしたアップルの矢継ぎ早なデバイス展開の背景には、AI競争での巻き返しという文脈がある。2026年の世界開発者会議(WWDC)で、同社はグーグルの生成AI「Gemini」を自社の音声アシスタントSiriに統合することを発表した[6]。これは「Apple Intelligence」と銘打たれた新戦略の中核であり、音声操作の高度化とパーソナライズを一気に推し進める内容だ[6]。折りたたみ端末への投資も、単なるフォームファクターの拡張というより、より大きな画面領域でAIアシスタントの価値を最大化しようとする一貫した設計思想の表れとみることができる。イタリアの街角でも、アップル製品の動向は依然として人々の主要な関心事のひとつであり、発売前から熱量の高い議論を呼んでいる。