リード
7月25日、オランダの夏は二つの顔を見せた。アムステルダムの運河沿いにはレインボーフラッグがはためき、マクシマ王妃の開会宣言でWorldPrideが始まった[1]。一方、ロッテルダムの中心街では、グリッターと羽根飾りをまとった約30のグループがスティールパンのリズムに乗り、ストリートパレードを繰り広げる[2][7]。年に一度のズィマーカーニバル(夏のカーニバル)だ。だが、この週末の主役は華やかな衣装だけではない。ドレンテ州では、線路に迷い込んだ子猫を救うため列車が止められ、アムステルダム南東部では、地域の祭典が高額な入場料のために存続の危機を迎えている[3][4]。祝祭と日常、伝統と変容が交錯する、2026年7月最終週のオランダの風景を追った。
初の母クイーンが舞うロッテルダム、WorldPrideと響き合う祝祭の週末
ロッテルダムのズィマーカーニバルで7月25日午後、パレードの先頭に立ったのは、この年のクイーンに選ばれたミレイナ・リチャードソンさんだ[2]。彼女の選出は、単なる美のコンテストの結果ではない。主催団体が前年、ある規則を撤廃したことの象徴だった。母親はクイーン選考に参加できない、という内規である。リチャードソンさんは長年、クイーンになることを夢見てきたが、二人の息子を産んだ後、その道は閉ざされたと考えていた。「規則に、母親は選考に参加できないと書いてあった。だから、その夢は諦めなければならなかった」と彼女は振り返る[2]。主催するズィマーカーニバル財団のサイナ・ルシオ氏は、時代にそぐわないと判断した理由をこう説明する。「子どもがいる女性たちも参加したいと望んでいることに気づきました。昔は、例えば子どもが病気になった場合、クイーンとしての務めを十分に果たせないのではないかという懸念がありました。しかし現在は副クイーンもいるので、その役割を代行できます」[2]。規則変更を受け、リチャードソンさんは今年の選考に応募し、頂点に立った。彼女は三つの保育所を経営する実業家でもある。「母親として、そして保育所の経営者としても、ズィマーカーニバルを代表できることを示せて、本当に嬉しい」と語った[2]。この日、アムステルダムではWorldPrideが開幕し、マクシマ王妃が開会を宣言した[1]。性的少数者の権利と文化を祝う国際的な祭典と、カリブ海や南米、アフリカの伝統が混ざり合うカーニバルが、同じ国の同じ週末に共存する。オランダの夏の寛容さと多層性が、路上に溢れ出した一日だった。
ユーロの入場料が映す変容——クワク・フェスティバル、岐路に立つコミュニティの祭典
同じ7月25日、アムステルダム南東部のクワク・フェスティバル会場では、バーベキューの煙とスパイスの香りが漂っていた[3]。スリナム系住民を中心に、多様な背景を持つ人々が集うこの夏の祭典は、今年で開催を終えるかもしれない。主催者が前日、現在の形式での継続は不可能だと発表したのだ[3]。理由は、高騰する運営コストと複雑化する行政手続きだ。かつては地域住民がテントを持ち寄り、無料で楽しむ「集まり」だった。しかし今、入場料は40ユーロ(約6,400円)を超える[3]。63歳のポール・ワトソンさんは、38年前からこの祭りに通う。スリナムから移住した20代の頃、親戚に連れられて初めて訪れた。「昔はみんなで集まって、テントを張れたんだ」と彼は言う。経済的に余裕のない人々にとって、ここは「夏のバカンス」の代わりだった。今も状況は変わらないとワトソンさんは指摘する。「子どもが三人いる家族で夏にスリナムへ行こうと思ったら、数千ユーロはかかる。多くの人にとって、ここが唯一の遠足なんだ」[3]。会場で話を聞いた39歳のウェイア・シュミットさんは、祭典終了の報を聞き、初めてチケットを買った。「これは文化遺産の一部だと思う」と彼女は話す。オーステルハウトから訪れた彼女は、「ここにいると、地元よりも居心地がいい」と感じるという[3]。コミュニティの紐帯として始まった祭りが、商業化の果てに、そのコミュニティの手からこぼれ落ちようとしている。
線路の子猫を救うため列車停止——ドレンテ州で起きた3時間の救出劇
祝祭の喧噪から北へ約150キロ、ドレンテ州の線路で7月24日朝、小さな命を巡る静かな作戦が展開された。午前9時30分頃、フローニンゲン発メッペル行きの列車を運転していた機関士ヨス・ファン・デル・フェーンさんは、線路脇に真っ黒な子猫たちがいるのを目撃した[4]。「本当にレールのすぐそばを歩いていたんです」と彼は地元放送局RTVドレンテに語った。「でも、さあ、どうすればいい?」[4]。大型動物の場合は明確な指示がある。線路内に牛や羊がいれば、ただちに運行指令に連絡し、列車を止める手順だ。しかし子猫の場合は、仮に衝突しても列車の安全を脅かすことはない。それでもファン・デル・フェーンさんは、指令室に通報した[4]。通報から間もなく、プロレイル(鉄道インフラ管理会社)の作業員と動物救急車が現場に集まり、捕獲用のケージが設置された。猫たちが線路を横切り始めたため、鉄道運行は完全に停止された。その後、速度制限付きで運行が再開されたが、捕獲作業は難航した[4]。最初の通報から約3時間後の正午過ぎ、ようやく一匹の子猫が捕まった。その「か細い鳴き声」と、ケージに置かれたキャットフードの匂いに誘われ、母猫ともう一匹の子猫も姿を現し、全ての猫が無事に保護された[4]。猫たちは動物救急車によってマイクロチップの有無を確認するために運ばれた。チップがなければ保護施設に送られる予定だ[4]。ファン・デル・フェーンさんは、もし飼い主が見つからなければ自分が引き取りたいとも話している。オランダの鉄道網を数時間にわたり滞らせたこの騒動は、動物の命に対するこの国の感度の高さを、何よりも雄弁に物語っている。
背景を少し
ズィマーカーニバルは今年で42回目を迎えた[2]。そのルーツは、オランダ領アンティル諸島やスリナム、カーボベルデ、スペインなど、かつてオランダと結びつきのあった多様な地域のカーニバル伝統にある[2]。移民たちがそれぞれの故郷の文化を持ち寄り、ロッテルダムの路上で融合させた独自の祝祭だ。こうした文化の多様性と、コミュニティを越えて共有される祝祭の精神が評価され、2023年にはユネスコの無形文化遺産に登録されている[2]。パレードには今年も約30のグループが参加し、それぞれが趣向を凝らした衣装と音楽で観客を楽しませた[7]。クイーンとキングの選出は、単に祭りの顔を決めるだけでなく、参加するコミュニティの価値観や、その時々の社会の空気を映し出す役割も担ってきた。母親の参加を禁じる規則の撤廃は、この祭りが伝統を守りながらも、静かに、しかし確実に変化を続けていることの証左である。