リード
ボリビアのロヘル・マリアカ検事総長は2026年7月14日、自国市民が虚偽の求人によってロシア軍の戦闘員として勧誘され、ウクライナでの戦争に動員されている疑いについて、人身売買の専門部署を通じて捜査を開始したと発表した[3][4][6]。SNS上でロシア軍の制服を着用したボリビア人男性の動画が拡散し、その遺族が戦死の報告を受けたと公表したことが端緒となった[3][4]。在ボリビア・ロシア大使館は、こうした欺瞞的な徴兵活動への関与を全面的に否定する声明を出し、むしろウクライナ軍側に多数のボリビア人が参加していると主張して反論している[1][5]。
何が起きたか
事態が表面化したのは、SNS上でロシア軍の制服を着たボリビア人男性の動画が拡散したことだった[3][4]。動画に登場したホセ・マリア・ソレト(29歳)は、従兄弟のイヴァン・バルディビア(28歳)や、ペルー人、コロンビア人とみられる人物らとともに戦闘地域での過酷な生活を語っていた[2][3][4][7]。遺族の証言によると、ボリビア国内でパン販売や大工、配管工をしていたソレトとバルディビアは、2026年4月に「月給1万6000ドルでロシアの建設作業員として働く」という条件を提示され、家族に詳細を告げずにロシアへ出発した[2][4][7]。彼らはロシア語で書かれた契約書の内容を理解できないまま署名させられ、現地到着後に戦闘地域へ送られたという[2]。当初は6カ月とされていた契約期間も、一方的に「戦争が終わるまで」と変更された[2]。ソレトの妻は、2026年6月3日を最後に夫との連絡が途絶え、その後、夫の指揮官を名乗る人物から6月8日に夫が戦死したとの通知を受け取ったと明かした[7]。また、バルディビアの死亡もその翌週に家族へ伝えられた[7]。これを受け、遺族は2026年7月13日にボリビアのサンタクルスで象徴的な追悼式を執り行い、当局への告発に至った[7]。
背景と文脈
ロシアによるウクライナ侵攻が長期化する中、ロシア軍は深刻な兵力不足を補うため、外国人労働者や移民を対象とした兵力確保を進めている[6]。ウクライナ対外情報庁(SZR)の報告によると、ロシアは外国人徴募兵の数を1万6000人から1万8500人に増やす計画を立てており、主に労働移民としてロシアに入国した外国人を標的にしている[6]。こうした外国人労働者は、高額な報酬や就労機会を提示されてロシアに誘い込まれた後、実質的にロシア国防省との軍事契約に署名させられるケースが相次いでいる[6]。今回のボリビアの事例だけでなく、コロンビアやペルーなどの近隣のラテンアメリカ諸国でも、自国市民が同様の手法でロシア軍に不当に勧誘された疑いについて、当局による捜査が進められている[3][4][6]。一方で、ロシア政府はこうした活動への組織的関与を否定している。ドミトリー・ヴェルチェンコ駐ボリビア大使は、外国人の戦闘員参加は民間の「傭兵ネットワーク」によるものであり、ロシア政府の公式な政策ではないと釈明した[8]。
各国はどう報じたか
ボリビアのメディアは、経済的な困窮から家族を助けるために騙されて戦地に赴き、命を落とした自国市民とその遺族の悲痛な訴えを大きく報じた[2]。ボリビア人リクルーターが仲介役となり、ロシア語の契約書を使って欺いた非道な手口を批判的に伝えている[2]。ペルーやポルトガルのメディアは、この問題をラテンアメリカ全域の困窮層を標的にした組織的な「人身売買」および「不法な徴兵」の構図として捉えている[4][6]。特にポルトガルメディアは、ロシアの移民局や警察組織がこうした欺瞞的な契約に関与しているとするウクライナ対外情報庁(SZR)の告発を引用し、ロシア側の組織的な関与の疑いを強調した[6]。これに対し、在ボリビア・ロシア大使館は2026年7月15日に声明を発表し、疑惑を「根拠がない」と一蹴した[1][5]。ロシア側は、自国の国防省のデータとして、2024年3月時点で多数のボリビア人がウクライナ軍側に合流して戦闘に参加し、多くが死亡していると主張[1][5]。なぜウクライナ側のボリビア人参加には関心が向けられないのかと疑問を呈し、世論の矛先をそらす論調を展開している[1][5]。
今後の注目点
今後の焦点は、ボリビア検察による捜査がどこまでロシア側のリクルートネットワークの実態を解明できるかである。ボリビア当局はすでに国際捜査協力を要請しており、同様の被害を抱えるペルーやコロンビアなどの近隣国との共同捜査や情報共有が具体的にどう進展するかが注目される[4][6]。また、ボリビア政府とロシア政府の外交関係への影響も論点となる。在ボリビア・ロシア大使館は、ボリビア外務省を通じた公式なルートであれば捜査への協力に応じる姿勢を示しているが、実際の捜査でロシア側の関与や仲介業者の実態が裏付けられた場合、ボリビア政府がロシアに対してどのような外交的抗議や規制措置をとるかが問われる[5]。さらに、ウクライナ側が指摘するロシアによる外国人徴募計画の拡大に対し、国際社会が国連などを通じて人身売買防止の観点から新たな制裁や監視網を構築するかも重要な論点となる[6]。